骨格筋の「質」を評価する

 過度な運動をすると筋肉痛がおきる。年老いると上手く身体が動きづらくなる。このような現象はすべて筋肉が何らかの支障をきたした結果によるものです。この筋肉は学術的な呼称として「骨格筋」と呼ばれています。この骨格筋は、私達人体に最も多く存在する組織であり、体の組成や身体の機能、運動能力を維持するために重要な役割を果たしています。具体的には以下の役割を担っています。

  • 運動による筋肥大や身体不活動による筋萎縮といった可塑性(常に変化をともなう)をもつ形態的な特性
  • エネルギーの貯蔵・消費や血糖を取り込むインスリンの感受性を担う代謝的な特性
  • 筋力といった身体能力に関わる収縮機能を担う機能的な特性

 とくに、骨格筋の収縮機能は筋肉量に依存し、身体能力と密接な関係があります。私達ヒトは骨格筋の収縮により身体を動かすことが出来るため、骨格筋の筋力を評価することは競技パフォーマンスを高める上での指標になることや、もし病気になり身体に支障が生じた際、通常の日常生活に戻るための有効な指標にもなることが出来ます。しかし、ヒトの骨格筋に備わった筋力を正確に測定することは、脳からの指令、神経機能の影響や筋肉量を統一する必要性など様々な要因が考慮されるため、非常に困難を要します。

 そこで私たちの研究室は、実験動物の生体から摘出した骨格筋を筋力測定装置に取り付け、電気刺激時の筋の収縮力をトルクに変換させることで骨格筋の筋力(張力)値を算出し、骨格筋組織そのものの正確な筋力を測定する実験系を構築しました。

 この実験系を用いて、私たちの研究室は肥満・糖尿病・加齢などの様々なモデルの骨格筋の「質」を評価してきました。これらのモデルは共通して、骨格筋細胞そのものの発揮筋力が低下すること、その機序に筋肉の収縮に関わる細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)が上手く働かなくなることが原因であることが分かってきました。

 また、骨格筋の質の低下には様々な要因が関係しているといわれています。私たちは肥満・糖尿病・加齢などに共通して骨格筋の内部に脂質が溜まる現象がその要因である可能性や、骨格筋の質に異常をきたす特定の脂質が存在すると仮説を立てて、その原因解明を研究しています。脂質に限らず骨格筋の「質」を反映する分子マーカーを探し出すことが研究室の目標です。

 今後、骨格筋の質低下の要因をさらに詳細に明らかにできれば、病態解明から治療方法の開発などの応用性が期待できます。ひいては高齢者の転倒や寝たきりのリスク回避によって要介護者を減らし、健康で若々しく生活する健康寿命の延伸を目指した社会へ貢献することができる研究成果となりえます。

もし私たちの研究に興味があればアクセス情報などからお気軽にご連絡ください。